いまの会社を創業してもうすぐ14年になるが、その中で考え方が大きく変わったことがいくつかあるので紹介したい。

前回の記事、「成長によって変わること」の続きです。

いまの会社を創業してもうすぐ14年になるが、その中で考え方が大きく変わったことがいくつかあるので紹介したい。

【人に優しいというのは相手ごとを自分ごととして共感できることだ。】

かならずしも正しくない。

優しさは人に価値を与えられることであり、力である。一見、優しく見える甘さは誰も助けることはできない。相手ごとを自分ごととして認識できるようになるためには、まず自分の力が必要だ。

私は、いまでも「やさしい社長」と言われることがあるが、起業した当時は、本当に「やさしい社長」だった。いや、「やさしい社長」ではなかった。「自分にも他人にも甘い社長」だった。

いまの会社を創業して、4年目のとき、大きな失敗をした。もし、あのときに戻って「力が欲しいか。欲しいのならばくれてやる」と言われたのならば、間違いなく魂を売る。それほどまでに、力は重要だと思う。

【多くの人が言うことは正しい】

かならずしも正しくない。

誰が言っていることなのか良く考える必要がある。インターネットやSNSが発達して、より多くの人たちが自分の意見を表明できるようになった。ただ、その意見は、あくまでその人の今までの学習と経験によるものだ。80%の人たちは、うまくいっていない。その人たちは多数派だ。20%の人たちは、あまり意見を表明していない。彼らはいつも小数派である。

【本当に有益な情報を公開するとパクられるのでしない】

かならずしも正しくない。

有益な情報や考え方を公開しても、共感いただくことはあっても、それをそのまま愚直に実行する人たちはほとんどいない。そもそも情報の洪水の中で、その重要性を判断して、行動にまで移せるものかどうかを判断する能力を多くの人は持ち合わせいない。

仮に、パク…いや、インスパイアされても、あまり困ることはない。多くの場合、その根幹となる前提条件まで単純にコピーすることは困難だからだ。例えば、私たちもお世話になっているWordPressはオープンソースでGPLのプロダクトだ。ほぼコピーして、フォークしたオリジナルのプロダクトとして出すこともできる。しかし、そのブランドやコミュニティをコピーすることは困難だ。

それよりも、共感してくれる人たちを、支持してくれる人たちを増やすことが重要だ。

【最先端のテクノロジーを学ぶことが重要だ】

かならずしも正しくない。

多くの最先端のテクノロジーは一つ下のレイヤーの技術の組み合わせであることが多い。その組み合わせの結果は無数に存在する。それらを追い続けるのは、人間の能力の限界を超える。それよりも、組み合わせの元である原理、原則を学ぶことの方が遙かに重要だ。

私のプロフィールにはたいてい「30年間のプログラミング経験がある」などと書いてある。しかし、これは対外的にわかりやすく説明したものだ。実際には、たしかに30年前から経験があるが、そもそも私は大学も文系で、証券会社の営業マン出身で、会計士補で、経営者だ。技術に当てられる時間は専門技術職の10分の1しかない。だから、彼らに匹敵する技術力を身につけるためには、最新のテクノロジーを追って、コピペ思考で戦っても勝ち目がない。彼らに勝つ唯一の方法は、原理原則で学ぶことだ。

つづきは、またの機会に。

成長によって変わること

中学生とき、国語の教科書で横光利一の『蠅』という文学を学んだ。様々な事情を抱える人々を載せた馬車が崖から転落し、一緒にいた蠅だけが飛んでいくという内容だったと記憶している。当時、何を伝えたいのかさっぱりわからなかったが、中学生の自分には衝撃的な内容で、いまだに良く覚えている。なぜ、この話を中学生に教えようとしたのかは未だによくわからないが、記憶に残るのものであったことは間違いない。

ただ、年を重ねるに連れて、生と死、社会の仕組み、ヒエラルキー、バタフライ効果など多くのことを学んで少しずつその背景は理解できるようになった。

いままで多くの書籍を読んできたが、その内容をどのように理解するかは、読んだ時点の自分によって大きく変わると感じている。

同じように、自分自身の成長によって、今まで正しいと思ってきたことが、必ずしもそうではないと思うようになったり、間違っていると思っていたことが、必ずしもそうではないと思うようになるものだ。

(つづく)